David Guetta Listen

ビッグルームの流行が廃れて久しい。2015年までは間違いなく流行のど真ん中に鎮座していたジャンルであったが、2017年くらいからトロピカルハウスが爆発的にヒットし、その座を奪い取った。それ以降の流行は良くわからない。より王道ハウスっぽいものが中心になったような気もするし、大きなムーブメントがなく、ウロウロしている印象でもある。Alan Walkerももう古いのかもしれない。

 

一応解説を入れておくとビッグルームとは主にBPM125〜130の四つ打ちを基本とするジャンルである。十分に長いビルドアップでテンションを上げ、ピークでドロップし、フロアをハードヒットするという構成が当時かなりフェス受けした。結局曲自体を購入する人がそこまで多くなかったため、ジャンルとしてセールスが伸びず、流行からは外れてしまったようである。よく分かんねえよ、と思う人はAviciiとかZeddの派手な曲のことだと思っておけばよろしい。

 

幾ばくかの寂しさを覚えつつ、最近はListenというアルバムを垂れ流していることが多い。2014年、世界中がビッグルームブームに沸きたっていた頃に満を辞してDavid Guettaがリリースしたものである。今更彼について書いたところで仕方がないので、今回は人物についての説明は割愛する。今回はこのアルバムについて思うところを書いていきたい。

 

次元の低い音楽語りになるので、別にこの記事を読んだって読まなくたって変わらないし、僕が紹介する曲を知っていたところで女の子との会話が盛り上がるわけではない。『音楽を聴きに来てるのー』という彼女達(のほとんど)は実際にはただ単に雰囲気を味わいに来ている。そこで流れている音楽は確かに彼女達の鼓膜を揺らしているため、主体性の有無は別としてその言葉自体に大きな嘘はないのであるが、僕の体感では半数以上の女の子が例えば Steve Aoki の名前を知らない(下らない事情により名古屋の女の子に限っては異常に知っている可能性がある)のだ。

 

本題に戻ろう。David GuettaのListenというアルバムについてである。収録曲の中で、最もビッグルームらしさを感じられる曲は4. Lovers On The Sunだ。おそらく殆どの人がブリッジ部分くらいは知っていると思う。最近はクラブでかけられることも減ったが、シンプルな曲構成とブリッジ部分での鮮やかな展開は一度聴いたら忘れることができない。売れ線ありありなので嫌いな人もいるかもしれないが、押しも押されぬ代表曲であると言えよう。

 

僕が一番渋いと思うのは12. S.T.O.P.である。まず歌メロの拍入れが完璧である。All the lives that we live When we rush and we push Till we bend, till we break、言葉が詰め込まれ過ぎているわけではなく、足りないわけでもないが、4分の4 拍子のリズムの上でギリギリのバランスを保ちながら、軽やかに踊っている。いきなりチープな例えで申し訳ないが、国内アーティストだと米津原子あたりが、この辺りをとても上手にやっていると思う。天賦の才を感じる。ブリッジに向かう部分の盛り上げ方は定番。ここはそこまで特筆すべき点がなく、極めて無難なものである。とはいえボーカルの伸びやかな高音はとても気持ちがいい。さて、ブリッジ部分である。当然メインテーマをドンと持ってくるのであるが、極めて秀逸なのが、完璧なタイミングで組み込まれた完璧なオブリガートフレーズだ。この8小節部分にこの曲の素晴らしさが集約されているといっても過言ではない。主旋律と絡み合いながら決して邪魔をせず、それでいて確実に耳に残る。どこか郷愁を感じさせる音色まで全てが完璧であると言える。これはまさに天才以外が思いつくことのできないフレーズだ。聴きたくなったことと思うので、最下部にリンクを貼っておく。

 

その他にも5. Goodbye Friendsや表題曲となっている7. Listenなど鮮やかな曲展開で聴くものの心を奪う素晴らしい曲が目白押しであり、クラブミュージックを愛する全ての人に

アルバム単位でお勧めすることができる。セールスのこともあるのでビジネス的には厳しいのかもしれないが、僕はまた、流行の最前線にビッグルームが颯爽と舞い戻ってくることを心待ちにしている。もちろんこのアルバムを聴きながらね。

 

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