さよなら最終兵器②

「ほんならあそこの2人行ってきてくれよ。白とグレーのペア、特にグレー」

1時間ほど前に我々が攻め込んだものの、ひらひらと受け流されて放流された案件だった。彼と我々の力量の差を図るための、いい試金石になる。

 

人生にはふたつの選択肢がある。

その状況を受け入れるのか、状況を変えるための責任を受け入れるのか。

デニス・ウエイトリー


 

『お久しぶりです』

 

幾分疲れた顔をして、某パカさんが立っていた。この寒空の下タクシーを探し回ったのであろう、無理もない。再会を懐かしみ、しばらく雑談をした後、彼は唐突に『指名してみ、全部仕上げたるわ』と言い放つ。

 

僕のウイングと同様、彼もまたナンパクラスタで第一線を張っていた頃と全く変わっていなかった。やれやれ。好むと好まざるとに関わらず、僕は誰かを指名しないといけない。たとえその案件が彼の手に堕ちてしまうとわかっていても、だ。思案を巡らせ、僕はあることを思いつく。

 

「ほんならあそこの2人行ってきてくれよ。白とグレーのペア、特にグレー」

1時間ほど前に我々が攻め込んだものの、ひらひらと受け流されて放流された案件だった。彼と我々の力量の差を図るための、いい試金石になる。

 

数分後、さらに疲れた顔をして彼が戻ってきた。聞くと軽くあしらわれ、無残にも敗北したという。ブサイクのくせに調子に乗るからだ、思い知ったか。指名した理由、案件の状況などの種明かしをしてゲラゲラと笑う。

 

『そんなことは事前に言っておいてくれよ、丸腰で突っ込んだわ。対策したかったわ』「アホか、ナンパは常に一発勝負やろ。観察力のないお前が悪い」

 

彼と僕ではナンパの力量に雲泥の差がある。僕はそのことについて重々承知しているし、おそらく彼も分かっているのだとは思うが、こうやって男同士の会話では対等に話ができる。彼もまた、僕の大切な友人の1人である。

 

許可を得ていないため、名前を出すことはできないが、その他にも偶然以前からの知り合いに会うことができた。テキーラを奢っていただき、しばらくすればお返しに御馳走する。そんなやりとりを繰り返している間に某パカさんはただの酔っ払いに成り下がり、時間は刻々と過ぎていった。

 

 

「そろそろちゃんとやろうか」そうウイングに言い、フロアに目をやる。

我々が入場した時よりもはるかに人が増えている、ピークタイムは近かった。

 

普段からそうなのかはわからないが、この日はスト値の高い子と低い子に割とはっきり分かれていたと思う。お手軽に持ち帰ることができて、なおかつそれなりに満足度も高い、いわゆる中間層が少なかった。仕方ない、良い案件から順番に当たるか。

 

塩対応、塩対応、ガンシカ、塩対応

 

それなりに予想していた結果ではあるが、やはりクラブの上位層は強かった。アプローチ法に問題があるのか、それともルックスが良くないとそもそもどうにもならないのか。この辺りは結局結果論的にしか判断できない部分はあるが、今後も諦めずに頑張っていきたい。

 

他の男性と和んでいる案件に対しても積極的にアプローチを仕掛ける。これはまだ半信半疑だが、どうも東京の男性は大阪のそれほど強くない印象であった。僕はAMOGが得意な方ではないのだが、案件を簡単に剥がすことができる。しかしながらフロアの流動性がそこまで高くなく、再度絡まれた際に面倒なことになるリスクが高いと判断し、奪った女はそれなりに対応したところで捨てていく。案件を奪い取られた男性プレイヤー諸君に対しては多少申し訳ない気持ちがないこともないが、我々に取られるくらいならどうせその程度である。即に繋がることのない無駄な和みをしなくて済んだだけありがたいと感謝して欲しいものだ。

 

中間層、中間層やや上あたりを狙って数件番ゲしたところで、その日はゲームセットとなった。状況的に僕の案件は回収が困難であるが、彼はしっかり回収するつもりであるとのことである。最強セフレ軍団を擁する彼にこの辺りの女に対する需要があるかどうかは正直分からない。彼の発した『ちゃんと回収しますよ』の言葉は僕に対する労いと慰めも少し含まれていたのかもしれない。

 

タクシーでホテルに帰り、エレベーターを待つ。僕と見た目や背丈のそれほど変わらない男性が美女と一緒にエレベーターに乗り込むところであった。

 

手ぶらで帰って来た自分を恥じるとともに、明日こそはしっかりやってやろうという気持ちで眠りにつく。坊主ではあったが、充実感のある夜であった。

 

BOOOOOOOOUZXE!!!

 

 

使用コスト

CLUB TK:Entrance Fee 3500円

                  テキーラ、その他各種アルコール類 3000円程度

タクシー代:1500円