アポ負けとその反省点

勝敗によって生じる違いは刹那的な行為の有無のみであって、それは今後の我々の人生に何かしらの変化をもたらす類のものではなかった。僕にとって彼女は、多少の性欲と自己顕示欲を満たすためだけに存在していた。

 

今年やらなければ多分もう二度とやる事はないだろう。自分の中である種のチャレンジだ。恐らくこのおまんこスタンプラリーは、何の意味も成さない。でも二十代の内にどうしてもこれを達成させたかった。単に既成事実が欲しかった。

PUA トニー


 

完璧なアポなどといったものは存在しない。完璧な女性が存在しないようにね。

 

某日、某出会い系アプリを駆使してアポを取った。

 

最寄駅に現れた彼女は可愛いといえば確かに可愛いし、どうってことないといえばどうってことのない、ごく普通の女の子であった。スト値という概念を彼女にそのまま当てはめれば、5かそれプラス若干のアルファといったところだろう。顔の造形はそれなりに整ってはいたが、肌のコンディションが少々良くないようであり、6と評するならばそれは過大評価であった。スト値マウンティングにはもう飽きているのだ。

 

結論から言うと、僕はこの日のアポに負けた。

 

その日に彼女と何らかの交わりが生じていたとしてもきっともう一度会うことはないし、負けたからといって準即を取りにいくような案件でもない。それは今後の我々の人生に何かしらの変化をもたらす類のものではなかった。僕にとって彼女は、多少の性欲と自己顕示欲を満たすためだけに存在していた。

 

ここ最近、1 on 1では特に大きな理由がない限りは目立った負け方をしていなかったため、今回もどうせ勝てるであろうと踏んでいた。仕事も少々立て込んでおり、前日も別の案件と会っていたため、疲労も溜まっていた。当然相手も生身の人間なのだから『どうせ勝てるであろう』という思考回路はあまりにも怠慢だと今になって思う。

 

途中までは滞りなくアポが進行する。一定レベルにおいてはこちらの予想通りに笑い、頷き、時に考え込む。定番のキラーフレーズに対しても想定通りの反応をみせる。『今回も楽勝だな、時短でクロージングをかけてさっさと即って寝よう』と感じていた。

 

僕のアポの取り方には大きな勘所が2箇所ある。1つは連れ出し、2つ目はギラつきである。僕の用いている連れ出し法は非常に軽量であり、軽量であるが故に『連れ出し=即の確定』とはならない(建前上の話なので、もちろん察しのいい女は納得して入ってくるか連れ出し先の前でグダるかのどちらかである)ため、ギラつきについてもそれなりに一生懸命やらなければいけない。連れ出してからもうひと勝負するというこのスタイルを、僕は割と気に入っているのでしばらくは変えるつもりがない。

 

1時間足らずで連れ出しを試みるも、今回はその1つめの勘所で躓いた。打診があまりにも唐突で雑だった。時短で進めていくにしても連れ出しに関わる部分だけは入念に布石を打ち、慎重に事を進めなければならない。その工程を怠った罰を受けた。

 

ド即系の案件であれば諸々通ったのかもしれないが、今回の案件は『意思表示の明確な処女』のような性格であった。所謂『強い女』ではなかったと思うが、流されやすい/にくいとはまた別に、あまり考えずに自分の思ったことをポンポンと口に出すタイプ。時として平気で失礼な発言をしてしまうこともありそうな、そんな感じ。それアスペじゃん、と騒ぐほどではなく、普通に社交的なのではあるが。連れ出しに対しても明確な理由づけをしっかりとしてあげないといけなかった。『怪しいな』と思いながらとりあえず着いてくる案件ではなかった。

 

上述の通り、破綻まではそれなりに順調にアポは進行していたのであるが、所々引っかかる点や違和感があった。わざとやっていたのか、そうでないのか(多分スト値的に『わざと』が許される人種ではない)は不明だが、コミュニケーションのズレが散見された。そのズレや違和感をほったらかしにしたまま、強引に時短クロージングをかけて雑な連れ出し打診をしてしまったことが敗因だったのだと思う。

 

恋愛経験に長けていそうな感じではなかったので、ある程度しっかり時間をかけて、もう少し一般的な口説き方をしてもよかったかもしれない。その女を知りたい、という気持ちにもあまりならなかったので、まあその辺は僕のダメな部分なのだが、こればっかりはどうしようもない気もする。

 

要は『時短でいける』と踏んだ案件がそうではなかったという話なのだ。それ以外については何が良くて、何が良くなかったか、を考える余地があまりない。是が非でも取りたい案件であってもそうでない案件であっても、勘所だけはしっかり抑えていかないと取りこぼしが増えるという当たり前のことを改めて実感するアポであった。

 

余談ではあるが、この敗戦の直後に立て続けにアポのキャンセルと延期を申し出るラインを受信した。女性のシックスセンスを感じざるを得ない瞬間であった。

ディスりの技術

新年明けましておめでとうございます。

 

今回は理論の話です。

 

テーマは『女の子の彼氏をどうやって褒めるか』で、前回の理論記事【ボーイフレンドデストロイヤー】の補足となります。

 

今回は『彼氏がいる女の子』に対して『プレイヤー自ら浮気方面での不安を煽る』のではなく『褒め言葉のみによって彼氏自身がつまらない人間である』と錯覚させる方法論になります。

 

 

顔とスタイルでぶっ刺していくタイプの人間はそもそもごちゃごちゃ考えなくてもオーバーキルできるのであんまり関係ないかもしれません。僕自身はそのような経験をほとんどしたことがないためその辺りはわかりません。切実にイケメンになりたいです。

 

『こちら側のスペックが彼氏に対して圧倒的に負けている場合』もそもそも女性がこちらの話にろくに耳を傾けない(聞くふりだけされる)可能性が高いため、やや難易度が上がります。レベルの低いプレイヤーに対して、女性は愚痴を言いません。

 

女性の状態によってはラッキーパンチももらえますが、基本的には『そこそこのプレイヤーがほどほどの相手とそれなりに渡り合うためのスキル』としてご理解ください。

 

ただし、スペックで彼氏に負けている場合であっても『プレイヤー側の言動に関係なく彼氏の浮気などで女側がたまたま勝手に不安になっている場合』はその限りではありません。ボーナスタイム(上記ラッキーパンチはこれを指す)です。ちなみに浮気が明らかな場合であってもここぞとばかりにそこをつつけば墓穴を掘ります。『浮気されて辛い。でも彼氏のことが好き』という感情に寄り添いましょう。北風と太陽です。

 

 

ボーナスタイムや浮気関連で話がやや脱線しましたが、前提である『彼氏自身がつまらない人間である』と錯覚させる方法に戻りましょう。

 

そもそもなぜアポの最中でわざわざ彼氏を褒めるのか。

彼氏が素晴らしい人間であると女の子に改めて認識させ、2人の絆を強固にするため。

愚痴を引き出し、女の子の不安を煽るため。

 

正解はですね。女の子の不安を煽ることが本来の目的です。ただ、ストレートに彼氏を悪く言う(Ex.そんな男ダメだよ、別れて俺と付き合いなよ)だけでは女の子からの反発を招きます。従って迂回のために『褒める』という手法をとるわけです。

 

今回選択する手法の着地目標は『彼氏は凡庸なしょうもない人間で、彼女もそんな凡庸なしょうもない彼氏に振り回されるような下らん人間であることを女性に認識させる』こととなります。男のイメージ操作を行うだけでなく、女の立ち位置を相対的に低くすることもまた大事な要素の1つです。そこにうまく着地できれば一通りのミッションクリアです。ちなみにここに着地してようやくスタートラインです。つまりは口説きを許可されるための下地作りということになります。ここから先はプレイヤー自身の持つ魅力で口説いていけばよろしい。スタートラインまでの一連の作業を『彼氏を褒める』というところだけでやっていくということですね。

 

 

そこに持っていくにはどうすればいいか、まずは普通に表面上の当たり障りない言葉を遣って褒めていきます。そこから愚痴を引き出していく。皆さんいつものパターンだと思います。(僕は彼氏持ち案件を崩すのが好きじゃないので実際にはあまりやりません)

 

問題はその後です。『愚痴を引き出し不安を煽る』のステップです。不安を煽るために彼氏に対して「いい人そうじゃん」「真面目そうだよね」「誠実そうだね」「実直な感じがするね」「(たとえしていても)浮気とかしなさそうだよね」などモテ関連でのネガティブイメージ(要はモテないということ)を含む褒め言葉を使っていきます。先の通り『真面目でいい人、凡庸でつまらない』というイメージに落とし込んでいきます。このイメージの落とし込みができれば先述の『彼氏は凡庸なしょうもない人間で、彼女もそんな凡庸なしょうもない彼氏に振り回されるような下らん人間であることを女性に認識させる』に着地できます。「彼氏が真面目すぎるとつまらないでしょ」は着地するまで言ってはいけません。着地まではあくまで潜在的な不安を煽るだけに留めるべきなので、そのような顕在性を孕んだ言葉は口説きを許可されてから用いるべきでしょう。

 

 

着地以降はそこから「お似合いじゃん」と適当に女をあしらっていけば『凡庸な彼氏とその彼氏にお似合いのつまらん彼女、そしてそんなつまらない女には見向きもしない自分』という構図を言外に作り出すことができます。

 

この構図がきっちりできれば『悪口を一切言っていないのに彼氏に対する不安を煽りながら彼女に対してネグを撃つ』というまあまあ破壊力のあるマウントが完成します。女性の立ち位置も相対的に下がっていますね。とはいってもやりすぎるとダメです。さじ加減はその場の空気を見ながらという感じにはなります。その辺の塩梅はプレイヤーの力量で何とか頑張ってください。失敗しても責任は取りません。

 

ちなみにこの構図はあくまで『女性とその彼氏が現段階においては凡庸でしょうもない人間同士お似合い』というだけです。ここで使ってはいけない言葉は「なんだかんだいい人〜」「紆余曲折あっても〜」あたりです。今の彼氏との明るい未来を想像させてしまうのでやめておきましょう。

 

 

今回の方法はあくまで一例なので別のルートから攻めても構いません。上記の構図が作れれば何でもOKです。ローマに続く道は1本ではありません。ただし間違ってもアフリカの方に進まないように。当然浮気関連の不安を煽るのもまた良しです。浮気系は鉄板なので割とローマまで行けます。The Gameや恋愛工学では浮気系が例示されていましたね。

 

褒め路線で進むことを選択した場合、彼氏が浮気をしていた(プレイヤー側が知っているか知らないか、明らかにされたかされないかは問わず)ら『真面目で浮気しそうにない凡庸でしょうもない人間』が浮気してることになりますからもう何もいいことなんてないですね。女性側からその真実を明らかにされた場合には北風と太陽をやりながら『お前、そんなくだらん男に振り回されてんの、ダサいな』を言葉に出さずに伝えていけば良いでしょう。

 

 

『ネグ』とは本来このようなものです。それまでの会話の中で下地とポジションがしっかり形成されて、その状況に対する女性の感情の変動があってこそ成立します。「そのバッグ、おばあちゃんのお下がりみたいで可愛いね」と1つのセンテンスだけで言うのはただの失礼に値します。ちなみに僕は単に失礼な人間なので、よくこういうことを言って女性に嫌われます。皆さんは僕のように女性から嫌われないようにしてください。

 

 

あとまあこれは毎回しつこく書くのですが、ボーイフレンドデストロイヤーは悪魔の所業なので頻繁に使わないようにしてください。現世が良くても地獄に堕ちますし、来世ではブサイクな男に産まれる確率が上がります。僕もよく実感するのですが、それこそ地獄ですよ。

 

 

本年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。

ばちょん

サンタコスを求めて 〜シャチの恩返し〜 ②

彼の優しさに甘えてしまうことは、僕のナンパ師としてのプライドが許さなかった。特殊な事情も多少考慮されるかもしれないが、あくまで原則としてコンビナンパはコンビナンパである。コンビ案件に対して我々もコンビで正面から当たる。見ず知らずの他人のおこぼれに預かる、ドブさらいのような情けないソロナンパは絶対にしたくなかった。

 

I don't want a lot for Christmas There is just one thing I need

I don't care about the presents, underneath the Christmas tree

恋人たちのクリスマス Mariah Carey


 

一旦エントランスを抜ければ何も言い訳はできない。入り口付近はそれなりに賑わってはいたが、サンタコス候補となるような、大きな荷物を持った案件はそこには居なかった。今日に限ってはサンタコス以外の案件が幾ら居たところで我々にとっては全く意味を為さない。幾許かの期待はあったが、それよりも遥かに大きな不安に押し潰されそうだった。

 

エントランス付近では単独で男の連れ出しに応じるトナカイを目にする。「少し遅かったか」と若干の焦りを覚えるが、我々の目的はトナカイではない。ソロで連れ出す力量をもったプレイヤーと僕のニーズが合致しなかったことをありがたく思わなければいけない。

 

 

そんなことを考えていると早くも今回の標的であるサンタコスと目が合う。彼女はソロであった。店員かと思案を巡らせる、振る舞いからはそうでもなさそうである。3秒ルール、オープン。

 

『友達とはぐれちゃってー』

普段のクラブ内では不安や苛立ちを帯びた声色、不満げな表情などとワンセットでよく耳にする言葉であったが、彼女の口調からは特にそういった負の感情は感じられなかった。おそらく彼女の相方は先ほど目にしたトナカイであろう。その相方は既に連れ出されている。どうする。ウイングに目をやる。行ってこい、という仕草。食いつきは悪くない。この案件をキープできれば連れ出しまではある程度確約される。千載一遇のチャンスであった。ウイングの姿がやや遠くに見える。邪魔にならないような、なおかつ僕の動きを把握しやすい場所へと彼は身を移していた。逡巡、葛藤が生じる。

 

結果として僕はこの案件を放流した。今日の2人のトッププライオリティは僕がサンタコスを即ることだ。フロアの状況すら確認できていないこの時点では僕がこの案件を連れ出せば達成に向けての期待値は高い。しかし、このタイミングで彼の優しさに甘えてしまうことは、僕のナンパ師としてのプライドが許さなかった。特殊な事情も多少考慮されるかもしれないが、あくまで原則としてコンビナンパはコンビナンパである。コンビ案件に対して我々もコンビで正面から当たる。見ず知らずの他人のおこぼれに預かる、ドブさらいのような情けないソロナンパは絶対にしたくなかった。

 

 

フロアの中にはサンタコスのペアが2組。6と4、5と5。決して理想的な環境ではないが、最悪の事態は免れたことに少し胸を撫で下ろす。片方は男と和んでおり、もう片方はバーカウンターに並んでいる。「とりあえずどっちかだな」『今日は全部任せるよ』

 

フロアの確認を済ませた後は、精神状態を整えるべく隅に移動する。アルコールを手に、タバコの煙をふっと吐き出す。時計を確認し、ウイングにラインを飛ばす。

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準備に使える残り時間は15分程度。目を瞑り、音楽のリズムと自身の身体を重ねる。環境と自分自身を完璧に調和させる。

鏡に映った僕が語りかける。

「大丈夫、きっとできるはず」

 

フロアに戻るも残念ながらサンタコスが増えることはなかった。先ほど男に捕まっていた6と4、そしてバーカウンターにいた5と5のペア。有効なペアは2組であり、我々はそのどちらかを選択しなければならない。片方のペアと和んでいるところをもう片方のペアに見られるとこちらの魂胆が露呈する可能性も高い。人生とは、選択の連続である。慎重な判断が求められた。

 

 

近づく、3秒ルール、オープン。僕が選択したのは6と4のペアであった。それまでの振る舞いから6がおそらくヘッドであろうと判断し、僕が6を叩く。直後にウイングがフォローに入る。タイミング、ポジション、全てが完璧なフォローだった。途中案件の割り振りが正解かどうかの答え合わせも含め、担当の入れ替えや4人での和みを行うが、完全に前衛を任せられていた僕がヘッドを落とさないことには話が進まないと判断し、引き続き6の相手を務めることにした。IOI3を引き出し、箱内セパを試みる。ウイングも現段階での担当設定に異論はないようであった。

 

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セパレート後はやや雰囲気を落とし、6を個別で落としきることとした。普段使わないドリンクフックも試みる。プレイヤー側が主導権を握った状態でしっかりとした和みを形成できていれば、ドリンクフックは厚意として成立し、相手に軽く見られてしまうことはない。ドリンクの残量はプレゼンテーションに使える制限時間と同義である。砂時計が落ち切る前に彼女を魅了する必要があった。保険として連絡先を聞き、4人でクラブを出る打診を通す。その頃、ウイングもまた担当案件の食いつきをしっかりと確保していた。

 

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ウイングの元へ戻り、状況を確認する。彼はクラブの中の目立たないところで暗闇に潜む獣のように、ただ息を潜めて案件のキープのみに努めていた。決してギラつかず、それでいてきっちりと高いまま食いつきを維持する。理想的なボールキープを行うウイングがそこにいた。彼からのラインを確認し、6に打診。最も大きな山場だった。緊張が高まる。受諾。

 

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サンタコスを連れクラブを出る僕は、きっと過去にないくらい胸を張っていたと思う。大きな分水嶺は超えたが最後の仕上げが残っている。

「大丈夫、きっとできるはず」

鏡に映った僕がそう微笑んだ。

 

 

彼女を口説きながら、ウイングにラインを飛ばす。

特に目立ったグダもなく、即。

2年越しの悲願が達成された瞬間であり、その行為はこれまでに僕が味わったことのない程の充実感に包まれたものだった。

 

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「ありがとう」

行為の後に彼女に対して伝えたその言葉は、僕の2年間の思いが詰まった、心からのものだった。ウイングを努めてくれた彼、そして今日の完璧なセパレートに思いを巡らせ、思わず涙が溢れそうにになる。怪訝そうな顔をする彼女にこのことを伝えるべきであろうか。

 

いや、僕は軽やかなナンパがしたいんだ。女の懐にすっと入り込んで、手品みたいに心を掴む。そういうアーティスティックなピックアップが俺の理想なんだ。そんなかっこ悪いことはやめておこう。

 

「ありがとう」

その思いは胸に仕舞い込んで、ただもう一度、彼女に同じ言葉を伝える。

2度目のお礼の言葉は彼女ではなく、ウイングのシャチに向けられたものだった。

 

  

シャチへ

ありがとう。2年前の貸し、しっかり返してもらいました。

これからも仲良くやっていきましょう。

 

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使用コスト

EntranceFee 1000円

Alcohol 700円

Taxi 1000円

サンタコスを求めて 〜シャチの恩返し〜 ①

自分の子供へのクリスマスプレゼントを選ぶ最中、コスプレをした女性店員を横目で見ながら「サンタコスの女の子とセックスがしたいな」と下卑た思いを巡らせる自分を想像するのは、それだけで筆舌に尽くし難いくらい耐えられないものであった。『天然物のサンタコスを即るまでは死ねない』と固く心に決めていた。

 

夢をバカにする人間から離れなさい。器の小さい人間ほどケチをつけたがる。

真に器量の大きな人間は、"できる"と思わせてくれるものだ。

マーク・トウェイン


 

事の始まりは2年前の12月に遡る。覚えたてのナンパに対して一生懸命取り組んでいた、シャチという男とコンビナンパをすることになった。クリスマスシーズンであったため「サンタコスを即りたいね」などと話していたような気がする。半ば冗談でサンタコス縛りというハードルを設け、彼は見事にサンタコス即を成し遂げた。僕が担当した案件もサンタコスではあったが明らかにクラブ慣れしており、クラブを出た後は彼氏が迎えにくるという。当時の僕に彼女をモノにするスキルはなく、アシストとセパレートに徹することにした。その彼氏は実在の人物で、本当にそこに来ているのか。ただのクソテストであれば、という願いにも似た諦めきれない気持ちを胸に彼女と共にクラブを出た。僕のその思いとは裏腹に彼女は無邪気な笑顔で「お兄さんありがとう」と言い、クラブのすぐ側に停まっていたミニバンを指差す。彼女がその車に乗り込むのを陰から指をくわえて眺めた後、放心状態となった僕は手ぶらで家路についた。ウイングのシャチに対して、最大限の称賛を送る一方で、羨ましいという気持ちもまた大きかった。担当する案件が逆であれば、という邪な気持ちも全くなかったかと言えば、正直なところそれは嘘になる。

 

昨年の12月はまた別の腕の立つ友人2人にウイングを快諾いただき、サンタコス縛りに2回トライした。両日とも全力で取り組んだが結果が出ず、とても悔しい思いをした。彼らはサンタコス縛りに特別な興味があったわけではなかった。他にいくらでもスト値の高い案件がいたにも関わらず、単に僕の我が儘に付き合わせてしまったことを心から申し訳なく思った。

 

 

 

サンタコスを即れないまま何となく現役を退き、それなりに誰かと結婚してそれなりにどこかで家庭を持つであろう自分の将来について考えてみた。自分の子供へのクリスマスプレゼントを選ぶ最中、コスプレをした女性店員を横目で見ながら「サンタコスの女の子とセックスがしたいな」と下卑た思いを巡らせる自分を想像するのは、それだけで筆舌に尽くし難いくらい耐えられないものであった。『天然物のサンタコスを即るまでは死ねない』と固く心に決めていた。

 

サンタコスを始めとする各種コスプレは“天然物”と“養殖物”に分類される。簡単に定義すると『事前に自分のためにコスプレを準備した女性や自分が用意したコスプレを着せた女性』は全て養殖物である。しかし天然物のサンタコスを即るためには『クリスマス前から当日までの数日間のみしか出会えない』『クラブ以外ではほぼ出会うことができない』という条件をクリアした案件のみを当日に即らないといけないため、非常にハードルが高い。クラブナンパがほぼ必須である上に、クリスマス期間中の各クラブにもごく少数ずつしかサンタコスの案件は存在しないないため、ハロウィンのような数打ちもできない。スト値や貞操観念などに由来する案件本来の難易度を度外視し、条件の厳しさのみでナンパの難しさを規定する場合、天然サンタコス縛りはあらゆる縛りナンパの中で最高峰の難易度であると感じており、だからこそ自分自身でもそれを成し遂げたかった。ピックアップアーティストを自認する僕にとって、養殖物のサンタではクリスマスプレゼントにはならない。今年こそ、の思いを胸にクラブに乗り込むことにした。

 

 

 

1ヶ月ほど前からスケジュールを綿密に練ったが、ナンパ以外でのスケジュール調整が難しく、しっかり稼働できるのは1日だけであった。その日は2年前にコンビを組んだシャチのスケジュールが空いているとのことであり、ウイングをお願いする。2年前の無念が胸をよぎる。去年のクリスマスから1年。待ちわびていた。当時の無念を晴らす機会がようやく巡ってきたのであった。

 

当日のために事前に何度かクラブに行き、コンビとしての練習を重ねた。姿勢やポジションについて多少なりのアドバイスを行う。半分はあくまで自分のためであったが、クラブナンパにおいてはコンビを崩さないという前提さえ守られていれば自分のためがウイングのためになり、ウイングのためが自分のためになる。サンタコス縛りでクラブナンパを行う以上、数の限られたサンタコスに対しては1つの凡ミスも許されない。彼とは一糸乱れないコンビになる必要があった。2019年のクリスマスシーズンが幕を開ける。

 

 

 

『この後飲みとかないっすかね』当日の合流後、とりとめのない話をしながら歩いているとキャッチのお兄さんから話しかけられた。“キャッチから話しかけられるのはオーラが足りないからである”といった風説を耳にしたことがあり、あながち間違ってもいないとは思う。我々にはキャッチを寄せ付けない、男性としての強いオーラが欠落していたのかもしれなかった。

 

『俺たちもっと強めのオス感出していった方がいいんじゃないの』「俺はね、そういうゴリゴリしたのは好きじゃないんだよ。軽やかなナンパがしたいんだ。女の懐にすっと入り込んで、手品みたいに心を掴む。そういうアーティスティックなピックアップが俺の理想なんだ」いきなりナンパ論を熱弁する僕に対してやや呆れたような表情を見せるシャチ。そのアーティスティックなピックアップを彼の目の前で披露するための最高の機会が訪れていた。

 

『トッププライオリティはお前がサンタを即ることだ。今日は俺のことは別に何だっていい』基本的にこの類の申し出は受けない僕であったが、2年前に僕とのコンビナンパでサンタコスを即っているシャチの言葉には重みがあった。僕が即を達成することが、彼の提案に対して報いることになる。そう感じたため、実質彼が死に体となるようなセパレートまでも場合によってはお願いすることまで含め、全ての主導権を僕に委ねてもらうことにした。

 

クラブに入ったとしてもサンタコスがいるかどうかさえわからない。今年結果が出なければ、また1年間を悔しい気持ちのまま過ごすことになる。期待と不安を胸に、今年の大舞台の開演が少しずつ迫ってきた。この大舞台の主演を張ることができるのは、他の誰でもない自分自身以外にいない。

 

さあ、ゲームの始まりだ。

さよなら最終兵器③

我々はPick Up Artistだ。そんな小細工なんかより、自分達自身の魅力でここにいる女たちを正面突破しよう。古臭い伝統芸、見せてやろうじゃないか。

 

多くの場合、諦めに至る理由は、
自分に何の力もないと思ってしまうことだ。

アリス・ウォーカー


 

25:00 渋谷駅

「渋谷駅のハチ公口にいるよ」とラインを飛ばし、シティボーイ感を味わう。ほどなく彼と合流した。道中はナンパに適したファッションについての議論を交わす。数年前に我々が出した結論は『結局ファッションは無個性が一番良い。減点を避けることに最適化したものがベストだ』というものであった。僕も彼も最近はそれなりにトレンドに乗った個性的な服装をしていることが多い。我々の理論はどうも時の洗練に耐えられなかったようである。

 

25:30 道玄坂

何度かこの周辺を歩き回ったおかげで、だいぶ土地勘が掴めてきた。驚いたのは道全体が比較的綺麗なことと、歩きタバコの少なさである。この辺りは大阪とは趣が異なる。『僕はTKよりATOMの方が全然イメージいいっすね。マジ相性いいっす。ゲヘヘヘヘ』この辺りは彼のタイプの問題であろうか、少なくとも彼とのコンビではこれまで大きなスタイルの違いを感じたことがなかったため、そのイメージが僕にも当てはまればいい、と少し願った。

『結局ナンパってのはある程度総合力なんで。別に社会的地位が高かったらそれで無双できるかっていうと別にそうじゃないですし、特にアトムみたいなクラブのフロアでその辺の女をナンパする場合だとクソ金持ちでもその辺の会社員でもぶっちゃけ大差ないと思います。要は自分よりもしっかりしてるかとか尊敬できるかってどうかが1つの判断基準になるんで。そのしっかり感とか尊敬の程度についてはそこまで関係ないっすね。ゲヘヘヘヘ』といったこれまでに幾度となく繰り返された会話をしながら、ATOMのエントランスをくぐる。さあ、ゲームの始まりだ。

 

26:00 ATOM TOKYO

フロアを一通り案内してもらった後、最上階でアルコールを嗜みながらタバコの煙と戯れる。いくつかのフロアを擁するこのクラブでは、階層ごとに違ったテイストの音楽が流れる。関西のクラブの中では大阪のgiraffeがそれに近いのであろうが、実質メインフロア以外でのナンパが許容されていないgiraffeと異なり、比較的どのフロアでも案件へのアプローチが可能であるような印象であった。僕がこれまでに経験したクラブの中では名古屋のID CAFEと最も似ていると感じた。

ワンフロア系のクラブであれば案件を一旦放流した後に別の案件と和んでしまうと、それを見た前の案件からの食いつきが下がる可能性もあるが、ここまで規模が大きいとそのリスクは比較的小さいと考えられる。今回は5-10分程度の和みでできるだけ多くの連絡先をかき集め、クローズ直前にその中から最も即に繋がる可能性が高い案件と合流する手法を選択した。

 

26:15 ATOM TOKYO

4のコンビから連絡先をゲットする。放流もスムーズであった。『まあまあ幸先いいっすね、今日は僕もやる気あるんでこの調子で10件行きましょう。そしたらさっさとクラブ出てラーメン食いながらザオラルしましょう、それがマジ完璧っす。ゲヘヘヘヘ』相変わらず調子のいい男である。フロアでは多少無理目のナンパも比較的目立っており、状況としてはやや荒れ気味であった。正3、逆3でのアプローチも目立つ。「奪える機会があればしっかり奪ってやろう」そう耳打ちする。

『そうだ、サインの確認しましょう。ゲヘヘヘヘ』「お前今更それするの」昔は色々とサインを決めていた我々であったが、アイコンタクトだけで全てを察することができる我々に細かいサインはもはや不要であった。簡単なサインの確認を行い、フロアを周回する。どのようなフィールドであっても基本的に理で勝負する僕にとって、申し分ないウイングである彼とともに行う戦略的なゲームは非常に幸福度の高い行為であった。

 

27:00 ATOM TOKYO

最初のうちはサクサクとそれなりの案件を中心にナンパし、連絡先の回収に努めていたが、次第に我々の動きが鈍くなる。僕がオープンした案件を彼が放流することが数回続き、これはスト値グダであると察する。この日のATOMでは案件の数には困らなかったのだが、如何せんスト値にやや問題があるように感じた。東京で数多くの小マシな女を食い散らかした彼と、ほぼ童貞に近い僕との間では可食域の差は明確であった。以前よくコンビを組んでいた時にも我々は下手なくせに案件を選びすぎて結局大してナンパせずに坊主を叩くことがよくあった。この日発生した彼のスト値グダも必然といえば必然であり、そのスト値グダでさえも僕にとっては懐かしいものであった。

 

27:30 ATOM TOKYO

『なんか俺ら勢い落ちてきてませんか。ゲヘヘヘヘ』上記の状況から、僕は自分から積極的に案件を捕まえることができなくなっていた。事情と状況を言葉で明確に彼へと伝える。『ああ、確かに割とスト値グダありますね。ゲヘヘヘヘ』

厳密な役割分担をするとポジショニングを含めた柔軟性が落ちるため、これまでは前衛後衛制を採用していなかった。しかしこの状況下ではそれを採用するのが最善であると思われたため、アプローチを全て彼に任せ僕が全ての相方に対してフォローを行うこととした。これできっと大丈夫。我々は折れかけた翼を取り戻し、また大空へと羽ばたけるはずである。

 

28:00 ATOM TOKYO

クラブの状況はかなり厳しいものになっていた。案件が疲れ切っている。この状況を突破する最も効果的な武器は何だろうか。案件とテンションを合わせる?他の男たちのナンパをdisり、差別化を図る?いや、我々はPick Up Artistだ。そんな小細工なんかより、自分達自身の魅力でここにいる女たちを正面突破しよう。古臭い伝統芸、見せてやろうじゃないか。

ミリオンダラースマイルとともに「やあ、パーティでもしてたのかい」と声をかける。古来からナンパクラスタに伝わる最強フレーズと、顔立ちの整った僕の満面の笑顔が織り成す最高のコンビネーション。自分がイケメンで良かったと実感する瞬間である。が、なぜか案件の反応は芳しくなかった。大方の案件が明後日の方向を向く。一体こいつらはどこを見てるんだ、眼科に行った方がいいんじゃないのか。 

『まあぼちぼちっすかねー。ゲヘヘヘ』彼の促しに応じ、これ以上の案件確保は諦め、クラブを後にすることとした。

 

 28:30 俺流塩ラーメン 渋谷本店

『せっかく来てるんだから東京っぽいラーメン屋行きましょう。ゲヘへへ』彼が期待に目を輝かせた僕を連れて行ってくれたのはATOMから徒歩5分のラーメン屋である。前振りからの落差がえげつない。クラブでの行動を振り返りながら、ああでもないこうでもない、と議論を交わす。数年ぶりのその感覚をスパイスに胃に流すラーメンはとても、とても人間的な味がした。

その後確保した数件の案件にラインを送るも、残念ながら望んでいた反応を得ることはできなかった。一方彼は逆ナンを受けた案件が良い反応をしているとのことである。彼とその案件の合流を見届け、この日は解散となった。

 

29:30 道玄坂

帰路に着く前に試してみたかった、というか単に言いたかった言葉がどうしても残っており、その辺を歩いている案件を捕まえる。

“どこ山学院大学の女“

以前拝読していたブログでのルーティンだったが、関西圏では使用する機会に恵まれないため、ここぞとばかりに使ってみる。果たしてこのルーティンはどうやって使うのであろうか。何となく和むも、定番の『始発で帰るグダ』を崩せずに放流。

逆ナンされた案件をそのまま手早く持って帰るウイングにこの2日間の感謝と若干の嫉妬が入り混じった称賛のラインを送り、タクシーに乗り込む。やはりクラブナンパは顔と身長である。そんな当たり前のことを今更ながら思い知り、帰路についた。

 

BOOOOOOOOUZXE!!!

  

使用コスト

CLUB ATOMEntrance Fee 3500

タクシー代:1500

  

※1

<案件をキープし続ける場合>

当該案件に対する連れ出しが成立する期待値をA

連れ出した後の即への期待値をB

<連絡先を集める場合>

連絡先を交換した案件と後から合流できる期待値をC

合流した後に即へと繋がる期待値をD

とそれぞれ設定した場合、フィールドの規模が大きければ大きいほどゲームの途中経過におけるCの低下リスクは低い。また数を確保することができる分、Cの集合>Aという図式が成り立つ。各々個別の案件に対して、単品で見る場合であればBを上回るDは容易には得られないであろうが、それよりもCの集合で勝負し、その集合の中から最もDの大きなものを選択することに優位性がある。

フィールドが小さい場合や見通しがいい場合はこの逆が成立し、案件決め打ちでしっかり和んだ方が勝率の高い状況も時として存在する。

ちなみに筆者もアホではないので、実際の現場ではケースバイケースとなることがほとんどであるいうことについては重々承知している。

 

※2

ナンパ,あるいは偶発的に出会った女性を魅了するという行為について

http://pickyuuup.hatenablog.com/entry/2013/03/29

 

12月の総括と来年の抱負について

今年も残り僅かとなりました。

 

お付き合いいただいた友人の皆さんにはとても感謝しています。

 

 

【12月総括】

トータル3即

・某出会い系アプリ ノーグダでの即。特筆すべき点のないGカップのキャバ嬢。

・某クラブサンタコス即

・某出会い系アプリ 地域内トップランカー

 

アポで2つ負けました。

1本はクラブ準即アポ、もう一件は某出会い系アプリアポです。

 

1本はどこかの社長の娘(令嬢と書くとドヤ感が出るのでおすすめ)で、

結局どこにグダがあるのかよく分からない案件でした。こちらの社会的事情からあまり強く出ることができなかったため、最終的に攻めあぐねてしまった感じがします。フェラまでしてもらって解散しました。結局そのフェラもなんか吸われすぎて痛かったので、フェラだけしてもらうことによってぐぬぬぬぬぬ、となることも特にありませんでした。

 

もう1本は僕以外のプレイヤーがそれなりにきちんとやれば多分ある程度スムーズに即れる案件だと思います。僕は自分自身の諸事情から完全に無理案件でした。めちゃくちゃ特殊な案件を引いてしまい、とても残念です。

 

 

【来年の抱負】

ナンパクラスタ界隈にはある程度長い期間いるので、今更抱負もクソもないです。

年間30ゲットくらいを目標にして、コンパや出会い系だけでなく多少はクラブに出るための時間も作れればいいなと思います。

 

 

それでは来年も変わらぬお付き合いのほどを宜しくお願い致します。

 

ばちょん

さよなら最終兵器②

「ほんならあそこの2人行ってきてくれよ。白とグレーのペア、特にグレー」

1時間ほど前に我々が攻め込んだものの、ひらひらと受け流されて放流された案件だった。彼と我々の力量の差を図るための、いい試金石になる。

 

人生にはふたつの選択肢がある。

その状況を受け入れるのか、状況を変えるための責任を受け入れるのか。

デニス・ウエイトリー


 

『お久しぶりです』

 

幾分疲れた顔をして、某パカさんが立っていた。この寒空の下タクシーを探し回ったのであろう、無理もない。再会を懐かしみ、しばらく雑談をした後、彼は唐突に『指名してみ、全部仕上げたるわ』と言い放つ。

 

僕のウイングと同様、彼もまたナンパクラスタで第一線を張っていた頃と全く変わっていなかった。やれやれ。好むと好まざるとに関わらず、僕は誰かを指名しないといけない。たとえその案件が彼の手に堕ちてしまうとわかっていても、だ。思案を巡らせ、僕はあることを思いつく。

 

「ほんならあそこの2人行ってきてくれよ。白とグレーのペア、特にグレー」

1時間ほど前に我々が攻め込んだものの、ひらひらと受け流されて放流された案件だった。彼と我々の力量の差を図るための、いい試金石になる。

 

数分後、さらに疲れた顔をして彼が戻ってきた。聞くと軽くあしらわれ、無残にも敗北したという。ブサイクのくせに調子に乗るからだ、思い知ったか。指名した理由、案件の状況などの種明かしをしてゲラゲラと笑う。

 

『そんなことは事前に言っておいてくれよ、丸腰で突っ込んだわ。対策したかったわ』「アホか、ナンパは常に一発勝負やろ。観察力のないお前が悪い」

 

彼と僕ではナンパの力量に雲泥の差がある。僕はそのことについて重々承知しているし、おそらく彼も分かっているのだとは思うが、こうやって男同士の会話では対等に話ができる。彼もまた、僕の大切な友人の1人である。

 

許可を得ていないため、名前を出すことはできないが、その他にも偶然以前からの知り合いに会うことができた。テキーラを奢っていただき、しばらくすればお返しに御馳走する。そんなやりとりを繰り返している間に某パカさんはただの酔っ払いに成り下がり、時間は刻々と過ぎていった。

 

 

「そろそろちゃんとやろうか」そうウイングに言い、フロアに目をやる。

我々が入場した時よりもはるかに人が増えている、ピークタイムは近かった。

 

普段からそうなのかはわからないが、この日はスト値の高い子と低い子に割とはっきり分かれていたと思う。お手軽に持ち帰ることができて、なおかつそれなりに満足度も高い、いわゆる中間層が少なかった。仕方ない、良い案件から順番に当たるか。

 

塩対応、塩対応、ガンシカ、塩対応

 

それなりに予想していた結果ではあるが、やはりクラブの上位層は強かった。アプローチ法に問題があるのか、それともルックスが良くないとそもそもどうにもならないのか。この辺りは結局結果論的にしか判断できない部分はあるが、今後も諦めずに頑張っていきたい。

 

他の男性と和んでいる案件に対しても積極的にアプローチを仕掛ける。これはまだ半信半疑だが、どうも東京の男性は大阪のそれほど強くない印象であった。僕はAMOGが得意な方ではないのだが、案件を簡単に剥がすことができる。しかしながらフロアの流動性がそこまで高くなく、再度絡まれた際に面倒なことになるリスクが高いと判断し、奪った女はそれなりに対応したところで捨てていく。案件を奪い取られた男性プレイヤー諸君に対しては多少申し訳ない気持ちがないこともないが、我々に取られるくらいならどうせその程度である。即に繋がることのない無駄な和みをしなくて済んだだけありがたいと感謝して欲しいものだ。

 

中間層、中間層やや上あたりを狙って数件番ゲしたところで、その日はゲームセットとなった。状況的に僕の案件は回収が困難であるが、彼はしっかり回収するつもりであるとのことである。最強セフレ軍団を擁する彼にこの辺りの女に対する需要があるかどうかは正直分からない。彼の発した『ちゃんと回収しますよ』の言葉は僕に対する労いと慰めも少し含まれていたのかもしれない。

 

タクシーでホテルに帰り、エレベーターを待つ。僕と見た目や背丈のそれほど変わらない男性が美女と一緒にエレベーターに乗り込むところであった。

 

手ぶらで帰って来た自分を恥じるとともに、明日こそはしっかりやってやろうという気持ちで眠りにつく。坊主ではあったが、充実感のある夜であった。

 

BOOOOOOOOUZXE!!!

 

 

使用コスト

CLUB TK:Entrance Fee 3500円

                  テキーラ、その他各種アルコール類 3000円程度

タクシー代:1500円