アポ負けとその反省点

勝敗によって生じる違いは刹那的な行為の有無のみであって、それは今後の我々の人生に何かしらの変化をもたらす類のものではなかった。僕にとって彼女は、多少の性欲と自己顕示欲を満たすためだけに存在していた。

 

今年やらなければ多分もう二度とやる事はないだろう。自分の中である種のチャレンジだ。恐らくこのおまんこスタンプラリーは、何の意味も成さない。でも二十代の内にどうしてもこれを達成させたかった。単に既成事実が欲しかった。

PUA トニー


 

完璧なアポなどといったものは存在しない。完璧な女性が存在しないようにね。

 

某日、某出会い系アプリを駆使してアポを取った。

 

最寄駅に現れた彼女は可愛いといえば確かに可愛いし、どうってことないといえばどうってことのない、ごく普通の女の子であった。スト値という概念を彼女にそのまま当てはめれば、5かそれプラス若干のアルファといったところだろう。顔の造形はそれなりに整ってはいたが、肌のコンディションが少々良くないようであり、6と評するならばそれは過大評価であった。スト値マウンティングにはもう飽きているのだ。

 

結論から言うと、僕はこの日のアポに負けた。

 

その日に彼女と何らかの交わりが生じていたとしてもきっともう一度会うことはないし、負けたからといって準即を取りにいくような案件でもない。それは今後の我々の人生に何かしらの変化をもたらす類のものではなかった。僕にとって彼女は、多少の性欲と自己顕示欲を満たすためだけに存在していた。

 

ここ最近、1 on 1では特に大きな理由がない限りは目立った負け方をしていなかったため、今回もどうせ勝てるであろうと踏んでいた。仕事も少々立て込んでおり、前日も別の案件と会っていたため、疲労も溜まっていた。当然相手も生身の人間なのだから『どうせ勝てるであろう』という思考回路はあまりにも怠慢だと今になって思う。

 

途中までは滞りなくアポが進行する。一定レベルにおいてはこちらの予想通りに笑い、頷き、時に考え込む。定番のキラーフレーズに対しても想定通りの反応をみせる。『今回も楽勝だな、時短でクロージングをかけてさっさと即って寝よう』と感じていた。

 

僕のアポの取り方には大きな勘所が2箇所ある。1つは連れ出し、2つ目はギラつきである。僕の用いている連れ出し法は非常に軽量であり、軽量であるが故に『連れ出し=即の確定』とはならない(建前上の話なので、もちろん察しのいい女は納得して入ってくるか連れ出し先の前でグダるかのどちらかである)ため、ギラつきについてもそれなりに一生懸命やらなければいけない。連れ出してからもうひと勝負するというこのスタイルを、僕は割と気に入っているのでしばらくは変えるつもりがない。

 

1時間足らずで連れ出しを試みるも、今回はその1つめの勘所で躓いた。打診があまりにも唐突で雑だった。時短で進めていくにしても連れ出しに関わる部分だけは入念に布石を打ち、慎重に事を進めなければならない。その工程を怠った罰を受けた。

 

ド即系の案件であれば諸々通ったのかもしれないが、今回の案件は『意思表示の明確な処女』のような性格であった。所謂『強い女』ではなかったと思うが、流されやすい/にくいとはまた別に、あまり考えずに自分の思ったことをポンポンと口に出すタイプ。時として平気で失礼な発言をしてしまうこともありそうな、そんな感じ。それアスペじゃん、と騒ぐほどではなく、普通に社交的なのではあるが。連れ出しに対しても明確な理由づけをしっかりとしてあげないといけなかった。『怪しいな』と思いながらとりあえず着いてくる案件ではなかった。

 

上述の通り、破綻まではそれなりに順調にアポは進行していたのであるが、所々引っかかる点や違和感があった。わざとやっていたのか、そうでないのか(多分スト値的に『わざと』が許される人種ではない)は不明だが、コミュニケーションのズレが散見された。そのズレや違和感をほったらかしにしたまま、強引に時短クロージングをかけて雑な連れ出し打診をしてしまったことが敗因だったのだと思う。

 

恋愛経験に長けていそうな感じではなかったので、ある程度しっかり時間をかけて、もう少し一般的な口説き方をしてもよかったかもしれない。その女を知りたい、という気持ちにもあまりならなかったので、まあその辺は僕のダメな部分なのだが、こればっかりはどうしようもない気もする。

 

要は『時短でいける』と踏んだ案件がそうではなかったという話なのだ。それ以外については何が良くて、何が良くなかったか、を考える余地があまりない。是が非でも取りたい案件であってもそうでない案件であっても、勘所だけはしっかり抑えていかないと取りこぼしが増えるという当たり前のことを改めて実感するアポであった。

 

余談ではあるが、この敗戦の直後に立て続けにアポのキャンセルと延期を申し出るラインを受信した。女性のシックスセンスを感じざるを得ない瞬間であった。